
ChatGPTを使い始めたとき、「何でも聞いていいんだ」と感じる方は多いと思います。気軽に話しかけられて、丁寧に答えてくれる。確かにそういうツールです。
ただ、「何でも」という感覚がちょっと危ない場合があります。ChatGPTに入力したテキストは、あなたのパソコンの中だけにある情報ではありません。インターネットを通じて送信されています。そのことを知らずに使うと、後から「入れなければよかった」という情報を入力してしまうことがあります。
この記事では、ChatGPTに入力してはいけない情報と、その理由を具体的に説明します。難しい話ではありません。「これは入れない方がいい」というリストと、「代わりにどう書くか」の方法を知っておくだけで大丈夫です。
ChatGPTに入力した情報はどこへいくのか
入力した文章がどう扱われるかを知っておくことが、安全な使い方の第一歩です。
ChatGPTはOpenAIというアメリカの会社が運営しているサービスです。あなたが入力した内容は、OpenAIのサーバーに送信されます。
学習への利用について
ChatGPTの無料版を使っている場合、デフォルト設定では会話の内容がOpenAIのAI改善(モデルの学習)に使われる可能性があります。有料プランのChatGPT Plusや、ビジネス向けのChatGPT TeamまたはEnterpriseでは、学習への利用はオフにできます(または最初からオフになっています)。
ただし、学習に使われるかどうかに関わらず、入力した情報はOpenAIのサーバーに送信・保存されます。「自分のパソコンだけで完結している」ということはありません。
会話履歴の保存
チャット履歴がオンになっている場合、あなたの会話はOpenAIのシステムに保存されます。何日後・何ヶ月後にその会話にアクセスできる状態にあるかは、OpenAIのプライバシーポリシー次第です。
「絶対に外部には出ない」とは言い切れない、という前提で使うことが大切です。
やってはいけない入力5つ
具体的に「入れてはいけないもの」を5つ挙げます。
顧客・取引先の個人情報
氏名・住所・電話番号・メールアドレス・生年月日など、実際の人物が特定できる情報は入力しないでください。
よくあるケースとして、「この顧客へのメールを考えて」と打つとき、「山田太郎様(050-XXXX-XXXX)へのメール」と実名・電話番号を入れてしまうことがあります。ChatGPTはメールの文章を考えてくれますが、その入力の中に顧客の個人情報が含まれています。
個人情報保護法の観点からも、顧客から預かった情報を外部サービスに入力することはリスクがあります。仮名や「A様」「Bさん」に置き換えて入力しましょう。
会社の機密情報・社外秘データ
売上データ・顧客リスト・新商品の開発情報・未発表のプロジェクト内容など、「社外に出してはいけない」とされる情報は入力しないでください。
「このデータを分析して」「この企画書の文章を整えて」という使い方をするとき、内容がそのまま入力されます。外部のサービスに送信していることを意識してください。
会社に所属している方は、社内の情報セキュリティポリシーを確認してから使い始めることをおすすめします。「ChatGPTに入れていい情報の範囲」を社内で決めておくと安心です。
パスワード・ログイン情報
「このパスワードは安全ですか?」「ログインできないのですが、ID: xxx、パスワード: xxxです」という入力はしないでください。
実際にパスワードをそのまま入力するケースは少ないかもしれませんが、「セキュリティの相談」として入力してしまうことがあります。パスワードは絶対にChatGPTに入力しないでください。
自分や家族の個人情報
自分自身の氏名・住所・電話番号・マイナンバー・銀行口座番号なども入力しないようにしましょう。
「この書類を書くのを手伝って」という使い方のとき、書類に記入する内容をそのまま貼り付けてしまうことがあります。「〇〇市〇〇町に住んでいます」「口座番号はXXX-XXXXです」といった情報は、外部サービスへの入力としては不適切です。
本名を使わなくても相談できることがほとんどです。「大阪市内に住む自営業者として考えて」のような書き方で代替できます。
医療・法律の判断を丸ごとまかせる入力
これは「入力してはいけない情報」とは少し違いますが、同じくらい気をつけてほしいことなので入れました。
「この症状は何の病気ですか?薬は何を飲めばいいですか?」「この契約書にサインしても大丈夫ですか?」という判断をChatGPTに丸ごとまかせるのは危険です。
ChatGPTは知識はありますが、あなたの状況を正確に把握していないまま答えを出します。また、誤った情報(ハルシネーション)を自信満々に答えることもあります。医療・法律・税務などの専門家の判断が必要な領域では、ChatGPTはあくまで「参考情報を集める補助」として使い、最終判断は専門家に聞いてください。
正しい入力の書き方:匿名化・ぼかしのテクニック
「個人情報を入れてはいけないなら、具体的な相談ができない」と思うかもしれません。でも、ちょっとした書き換えで、ほぼ同じ相談ができます。
実名・固有情報を仮名に置き換える
| 入れてはいけない書き方 | 置き換えた書き方 |
|---|---|
| 山田太郎様へのメールを書いて | A様へのメールを書いて |
| 株式会社〇〇との契約について | 取引先との契約について |
| 東大阪市の自社店舗の集客を考えて | 大阪府内の小売店の集客を考えて |
| 売上高1,234万円のデータを分析して | 売上高が約1,200万円のケースを分析して |
数字もぴったりのものではなく「約〇〇」「〇〇程度」とぼかすだけで安心度が上がります。
「自分の状況」として話さず「ある人のケース」として聞く
「私は大阪で整体院を経営していて、年収は〇〇円で……」という書き方ではなく、「大阪で整体院を経営する個人事業主のケースで考えてほしい」とすると、具体性を保ちながら個人特定のリスクを下げられます。
機密情報を「一般化」して相談する
社内の機密データを入れなくても、「月商が先月比で20%下落した小売業者が取るべき施策は何か」という形で一般化すれば、同じような示唆を得られます。数字や業種・状況を一般化するだけで、機密情報を入れずに相談できます。
安全設定も確認しておこう
入力内容に気をつけることと合わせて、設定面でもできることがあります。
学習への利用をオフにする
ChatGPTのSettings(設定)→「Data controls」(データ管理)→「Improve the model for everyone」をオフにすると、会話が学習に使われなくなります。
無料プランを使っている場合は、この設定を確認・変更しておくことをおすすめします。
履歴を残さずに使う(必要に応じて)
機密性の高い内容を扱う場合は「Temporary chat(一時チャット)」を使う方法があります。一時チャットは会話が履歴に残らず、学習にも使われません。都度設定を変えるより、機密の話をするときだけ一時チャットに切り替えると便利です。
よくある質問
Q: 設定で学習をオフにすれば、何を入力しても大丈夫ですか?
A: 学習への利用をオフにしても、入力内容はOpenAIのサーバーに送信されます。「学習に使われない」と「外部に送信されない」は別のことです。個人情報や機密情報は、設定に関わらず入力しないことをおすすめします。
Q: ChatGPT Plusや有料プランなら安全ですか?
A: 有料プランでは、デフォルトで会話が学習に使われません。ただし、入力情報がOpenAIのサーバーに送信されること自体は変わりません。「有料だから何を入れてもいい」ということにはなりません。
Q: 業務で使いたいが、社内情報を扱う必要があります。どうすればいいですか?
A: 企業向けの「ChatGPT Enterprise」や、MicrosoftのAzure OpenAI Serviceなど、企業契約での利用であれば、よりセキュリティの高い条件での利用が可能です。個人アカウントのChatGPTと企業向けサービスでは、データの取り扱い条件が異なります。社内の情報システム担当者や専門家に確認してから導入することをおすすめします。
Q: 家族や友人のことを相談するとき、名前を出しても大丈夫ですか?
A: 名前だけであれば影響は限定的ですが、住所・連絡先・病状などが特定できる情報が一緒に入るのは避けた方が良いです。「家族の一人が体調を崩していて」「友人が転職を考えていて」という書き方でも十分に相談できます。第三者の情報を外部に出すことには慎重でいてください。
まとめ
ChatGPTは便利なツールですが、インターネットを通じて外部のサーバーに送信するサービスです。「何でも気軽に」という感覚で使い続けていると、後から「入れなければよかった」という情報を入力してしまうことがあります。
入力してはいけない情報は5つです。
- 顧客・取引先の個人情報
- 会社の機密情報・社外秘データ
- パスワード・ログイン情報
- 自分や家族の個人情報
- 医療・法律の判断を丸ごとまかせる入力
これらを「仮名に置き換える」「一般化する」「ぼかして書く」だけで、同じような相談はほぼできます。完全に避けるのではなく、「書き方を変える」という発想で使ってください。
安全な使い方を知った上で使い始めることが、ChatGPTを長く・安心して活用するための第一歩です。
